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慢性前立腺炎

  • 会陰部痛がある(おしりと睾丸の間の奥のほうが痛む)
  • 排尿するときに痛む
  • 尿が近い
  • 下腹部に鈍い痛みがある
  • 射精するときに違和感を感じる

以上の症状がある男性の多くは慢性前立腺炎と診断されることが多いです。
慢性前立腺炎はあまり聞き慣れない病気ですが、実はこの病気に長い間悩んでいる方はかなり多いです。

慢性前立腺炎とは

前立腺炎とは、前立腺の中で炎症が生じた状態です。
前立腺の炎症が長い間治らない病気を慢性前立腺炎といいます。

慢性前立腺炎は①細菌性と②非細菌性に分かれます。慢性前立腺炎は②のほうが多いです。

① 細菌性

細菌が前立腺に侵入して感染を起こすタイプですが、原因菌が証明されていない場合があり、細菌がどのくらい関わっているか不明です。

② 非細菌性

細菌感染以外の原因で起こるので慢性非細菌性前立腺炎と呼ばれます。
尿道括約筋(尿道を閉める筋肉)が十分緩まないことで前立腺に尿が逆流する現象(前立腺の炎症を引き起こす)、骨盤内の血流障害や骨盤内の自律神経の機能亢進(非炎症性の痛みを引き起こす)などが原因にあげられます。

原因

立腺が持続的および機械的に圧迫されることが原因のひとつと言われています。
また、睡眠不足、ストレス、飲酒、刺激物(辛い物、コーヒー等)の摂取、冷えなども原因となります。
ただし、その原因を特定することは困難な場合が多いです。

分類

前立腺炎は、米国国立衛生研究所(National institute of Health: NIH)が提唱した4つのカテゴリーに分類されています。
その中のカテゴリーⅡとⅢが慢性前立腺炎にあたりますが、Ⅲ.慢性非細菌性前立腺炎が多く、慢性骨盤痛症候群とも呼ばれています。
実際の臨床現場では最もよく出会いますが、多くの場合、なかなか治療できないのが実状です。

前立腺炎の分類(NIH)

カテゴリーⅠ 急性細菌性前立腺炎
カテゴリーⅡ 慢性細菌性前立腺炎
カテゴリーⅢ 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群
カテゴリーⅢA 炎症性
カテゴリーⅢB 非炎症性
カテゴリーⅣ 無症候性炎症性前立腺炎

症状

上記で示したように、主な症状は、会陰部痛、下腹部の不快感、頻尿、排尿時痛、射精時の違和感です。
このように症状は多岐にわたりますが、慢性前立腺炎症状スコアにより重症度や治療効果判定が定量化できて、慢性前立腺炎を客観的に判断できるようになりました。
このスコアは本邦ではあまりみかけませんが、慢性前立腺炎の治療に時間がかかってしまうケースが多いので、当院ではこのスコアをできるだけ活用し、多彩な症状を客観的に把握したうえで治療をすすめていきます。

検査と診断

慢性前立腺炎は除外診断になります。
同じような症状をきたす疾患として、尿路結石、膀胱がん、尿路感染症(膀胱炎など)、性感染症(非淋菌性尿道炎)、精索静脈瘤などがあげられます。
これらを除外してはじめて慢性前立腺炎と診断できます。

検査

まずは、細菌感染の除外です。性感染症のリスクが少しでもある場合は、性感染症のチェックは必須です。
通常の尿検査で濃尿や細菌尿がなくても、非淋菌性尿道炎(クラミジア性やマイコプラズマ性)の可能性はあります。
また、40歳以上の方は前立腺肥大症の合併の有無を調べるため、腹部超音波検査を行います。
また、尿検査などで血尿がある場合や症状がなかなか改善しない場合は膀胱がんの除外のため膀胱内視鏡検査やCT検査を考慮する必要があります。

  • 尿検査
  • 腹部超音波検査
  • クラミジアPCR検査(性感染症のリスクがある場合)

場合により

  • 膀胱内視鏡検査
  • 腹部レントゲン、腹部CT

治療

生活習慣の改善と薬物治療が中心となります。

① 生活習慣の改善

慢性前立腺炎は骨盤内の血流不足と関連があるので、骨盤の血流改善を図る目的で日常生活の指導を行います。
刺激物の摂取や飲酒を控えて、デスクワークや自動車運転のときは、適度に休憩を取り、長時間の自転車やバイクの運転は避けてもらいます。
また、半身浴や適度な運動(スクワットなど)を生活習慣に取り入れてもらいます。
ただし、人によって生活習慣は違うので、以上述べたことすべてを見直すことは現実的ではないかもしれません。
患者さまの日々の生活にそれほどムリのない範囲で生活習慣の改善ができるようアドバイスさせて頂きます。

② 薬物治療

慢性前立腺炎は原因がはっきりしないため、患者さまの病状にみて治療薬を決めていきます。
具体的に使用する薬剤としては、抗菌薬(非淋菌性尿道炎への対応)、PDE5阻害薬(前立腺の血流改善)、抗炎症薬(植物製剤や鎮痛剤)、漢方薬などが挙げられます。
治療効果に関しては、直ちにその効果が現れる患者さまもおられますが、症状が改善せず治療が長期になる患者さまもおられます。

③ 磁気治療

薬物治療で改善がみられない患者さまには、骨盤内の血流改善を目的とした磁気治療を行うことがあります。

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