トリコモナス症
近年の日本では減ってきている性感染症ですが、中高年層でまれに見られることがあり、まだまだ注意するべき性感染症です。
トリコモナス症はトリコモナス原虫という寄生虫が性的接触により性器内に侵入して炎症を起こす感染症です。
男性の場合は排尿によって体外へ排出されやすいので、男性は感染しても無症状であることが多いです。
ただし、男性の場合は無症状であっても長期にわたり尿道や前立腺に持続感染することがあり,いつの間にかパートナーの女性を感染させてしまう可能性があります。
女性が膣炎の症状が出てトリコモナス症になったとき、パートナーの男性もすでに感染している可能性がありますので、パートナーも同時に治療することが大切です。
トリコモナス症は男性の非淋菌性非クラミジア性尿道炎の5%ほどを占めるといわれています。
原因
トリコモナス症の原因は、トリコモナス原虫(0.01~0.025mm)であり,性行為で感染して膣炎を起こします。
トリコモナス症は、男性よりも女性に症状が出やすいことが特徴です。
膣炎が起こるのでトリコモナス膣炎ともいわれています。
症状
感染してから症状がでるまでの期間:10日間~6ヶ月
男性
男性は無症状のことが多いです。ときに排尿時痛や頻尿、尿道分泌物が出る、などの尿道炎の症状がみられることがありますが、ごく軽症です。
前立腺炎や精巣上体炎は非常にまれですが、慢性前立腺炎の患者の数%にトリコモナスが検出されたという報告があります。
女性
女性では,感染者の半数が無症状ですが、症状は男性より強いです。
- 悪臭が強いおりもの(魚のような臭い)
- 黄緑色であわ状の大量のおりもの
- 膣のかゆみ
- 外陰部痛
- 性行為の痛み
トリコモナス症では、おりものの色やにおいの症状が人によってかなり違います。
これは、症状をひき起こす原因がトリコモナスだけではないからです。
膣の中には、デーデルライン桿菌という乳酸菌が住んでいます。
乳酸菌はグリコーゲンを栄養分として乳酸を作るので、膣の中はいつも酸性(pH<5)に保たれています。
酸性の環境では通常の菌は生きていけないので、膣内の感染の予防になっています。
ところが、トリコモナスが膣の中に入ってくると、トリコモナスは乳酸菌の栄養分であるグリコーゲンを横取りして、乳酸菌が乳酸を作れないようにしてしまいます。
すると膣の中が酸性を保てなくなり、膣の中にいろんな菌が入ってきて、トリコモナス症のさまざまな症状を引き起こします。
検査と診断
男性の場合
- 細菌検査:尿道スワブ
- 核酸増幅検査(NAAT)
女性の場合
- 鏡検:腟分泌物を調べる。細菌性膣症も同時に検査できる。
- 核酸増幅検査(NAAT)
腟炎の女性患者と尿道炎の男性患者がいて、お互いパートナーであれば,トリコモナス症を疑います。
淋菌, クラミジア,マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症など,他の性感染症を治療した後でも症状がなかなか治らないときには,トリコモナス症も強く疑われます。
トリコモナス症の検査を受けるとき、パートナーの男性も一緒に検査を受けてもらうことが重要です。
治療
メトロニダゾール製剤
経口メトロニダゾール(フラジール®)という抗原虫薬を使います。
以下のどちらかの方法で内服してもらいます。
メトロニダゾール2g 1回 内服
メトロニダゾール500mg 1日2回 7日間 内服
メトロニダゾールは、吐き気や下痢、皮疹を起こすことがあります。
まれに手足のしびれや意識障害を起こすことがあります。
パートナーの治療
必ずパートナーと一緒に治療することが大切です。
パートナーと同時に治療すれば再発する可能性は低いので、治療して症状がなくなれば、後の検査は必要ありません。