過活動膀胱
- 1日に何回も尿に行く
- 夜に何回も尿に起きる
- 急に尿がしたくなりトイレに駆け込む
- トイレに間に合わず尿がもれてしまう
上記のような症状がある場合、過活動膀胱の可能性があります。
日本国内で40歳以上の男女の7人に1人が過活動膀胱の症状を持っており、国内の患者数は1000万人を越えたと言われています。
患者数は加齢とともに増加し、80代ではほぼ3人に1人が過活動膀胱による症状に悩んでいると言われています。
ただ、過活動膀胱の患者さまの医療機関への受診率は非常に低いのが現状です。
過活動膀胱は適切に治療をすれば改善しますので、我慢せずに泌尿器科を受診してください。
過活動膀胱とは
過活動膀胱は、自分の意思とは関係無く、膀胱が勝手に収縮してしまう病気です。
TVCMなどで一般的に知られるようになりましたが、過活動膀胱の定義自体はあいまいです。
過活動膀胱は、膀胱の形態的異常があることが必須ではなく、「尿意切迫」という自覚症状だけで定義されます。
つまり、症状だけで診断できる疾患であり、「風邪(感冒)」と同じです。
診断
- 問診(過活動膀胱症状質問票)
- 尿検査
- 超音波検査(エコー)
※いずれも簡単な検査です
初診時に行われるのは問診です。過活動膀胱は患者さまの自覚症状だけで診断するので、重症度の判定には客観的な指標が必要で、過活動膀胱症状質問票(OABSS)がよく使われます。
排尿症状があるからと言って、必ずしも過活動膀胱とは限りませんので、エコーなどで腎臓や膀胱に何か異常がないか、膀胱に残尿がないか、男性の場合は前立腺肥大症がないかを調べます。
過活動膀胱の治療
行動療法
- 生活指導
- 飲水指導、カフェイン摂取をひかえる
- 膀胱訓練
排尿を我慢して少しずつ排尿間隔を延ばすことにより膀胱容量を増やす訓練法です。
排尿計画を立て、短時間から始めて徐々に15~60分単位で排尿間隔を延長し、最終的には2~3時間の排尿間隔が得られるように訓練をすすめます。
骨盤底筋体操
腹筋に力が入らないように膣や肛門を締めるようにする方法です。特に女性において有用と言われています。
腹圧性尿失禁に対して広く行われる治療ですが、過活動膀胱にも有効です。
当院で指導することができます。
薬物療法
症状を軽減させる対症療法ですが、効果的です。
抗コリン薬
膀胱の収縮を抑えて、尿意切迫感も改善する薬剤です。
口渇や便秘といった副作用がしばしば見られます。
また閉塞隅角緑内障の方には使用できません。
ポラキス®、バップフォー®、デトルシトール®、ベシケア®、ウリトス®、ステーブラ®、トビエース®、ネオキシ®テープ(貼付剤)など。
β3作動薬
蓄尿時の膀胱の拡張を促進する薬剤で、尿意切迫感も改善します。
口渇や便秘の頻度が低いです。ベタニス®、ベオーバ®など。
干渉低周波療法・磁気刺激療法
電気や磁力により骨盤底の筋肉や神経を刺激するもので、腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁に対する有効性が示されています。
これらの治療を行っても効果のない難治性の過活動膀胱の患者さんにはボツリヌス毒素(ボトックス)膀胱壁内注入療法を行います。
ボツリヌス膀胱壁内注入療法
尿道から内視鏡を挿入し、膀胱内から膀胱壁にボツリヌス毒素を注入する治療です。
膀胱壁に注入されたボツリヌス毒素は膀胱の勝手な収縮を抑えて切迫性尿失禁を改善します。
ボツリヌス毒素は、本邦では顔面神経麻痺の治療などに使用されていましたが、2019年に過活動膀胱に保険適応となりました。
当院では日帰り治療で行っています。