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尿路結石

尿路結石とは

尿路結石とは、尿路(腎臓から尿道まで)に結石が生じる病気で、結石ができる部位によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼び名が変わります。
腎臓や尿管の結石は上部尿路結石、膀胱や尿道の結石は下部尿路結石と大まかに分けられ、尿路結石の9割以上は上部尿路結石です。

尿路結石は泌尿器科の外来で最もよく出会う病気のひとつで、尿路結石にかかる人の数が年々増える傾向にあります。
女性より男性に多く発症し、男性の7人に1人、女性の15人に1人が一生のうちに一度はなると言われています。
男性は30~50代の働き盛りの世代、女性は閉経後の50~70代に多く発症します。
結石の痛みは七転八倒するような激痛と言われていて、病気における三大疼痛の1つとされています(残り2つの病気は心筋梗塞とくも膜下出血です)。

尿路結石の原因

尿路結石は、食事や生活習慣、年齢、男女差、職業、ストレス、遺伝、気候、尿路の先天異常、薬剤などさまざまな要因が関わっています。

① 食事

食生活の欧米化によって動物性脂肪や動物性たんぱく、塩分、糖分などの摂取量が増えています。

② 生活習慣病

糖尿病、高血圧症、脂質異常症、痛風など

③ 男性

「コーヒー・紅茶・緑茶などを大量に飲む」「食事はお弁当やカップ麺が中心」「食べてすぐ寝る」など仕事中心の生活を送っているなど

④ 職業

なかなかトイレに行けない職場など

⑤ 肥満、運動不足

⑥ 脱水

夏場は汗をかいて尿が濃くなると、冬場に比べて尿路結石が増えると言われています。

⑦ 代謝異常

高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症、高尿酸尿症、低クエン酸尿症、低マグネシウム尿症は異常所見として重要です。

⑧ 薬剤性

内服している薬剤が原因で結石ができることもあります。緑内障治療薬であるアセタゾラミド、活性型ビタミンD、尿酸排泄促進剤(プロベネシド)、AIDS治療薬インジナビルなどがあげられます。

分類

結石の成分によって分類され、成分の違いにより原因、治療法や予防法が異なります。

最も頻度が高いものはシュウ酸カルシウム結石です。

シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、及びこの二つが混在する結石が最も多く、9割以上を占めます。尿酸結石は頻度として5%ほどですが、薬物療法で治療できます。
尿路感染症によってできるリン酸マグネシウムアンモニウム結石やカーボネイトアパタイト、また、遺伝性に発生するシスチン結石も認められることがあります。

症状

痛み、疼痛発作

「左の脇腹に、大きな針を刺すような痛みが出ました。長い時間は続かないけど、何回か断続的にきました。」
「排尿しようとしたら、下腹にこらえられない激しい痛みがきました。もう我慢も限界で、救急車をすぐ呼びました」
以上のように尿路結石による痛みは、七転八倒するような激痛から何とか我慢できるものまであり、その程度はさまざまです。
これは結石ができる場所によって症状がそれぞれ異なるからです。

尿管に結石がある場合は、尿の流れが悪くなると、腎盂内の圧が急激に上がることによって、その周囲(背中や脇腹)が痛くなります(疼痛発作)。
あまりに痛みが強いと、吐き気や気分不良も生じます。この痛みはじっとしていても、体を動かしても変わりません。
尿管の結石が膀胱付近まで降りてくると、尿が近くなったり、尿が残った感じ(膀胱刺激症状)が起こることがあります。
腎臓(腎盂や腎杯)に結石があると、尿の流れを遮ることがあまりなく、無症状の場合もあります。

血尿

結石が尿路の粘膜とこすれて、血尿が出ることがあります。
目で見える血尿から、ごく軽度の血尿(顕微鏡的血尿)まで程度はさまざまです。

発熱

結石により尿の流れが悪い状態で細菌感染を起こすと、結石性腎盂腎炎という命に関わる病気を引き起こす場合もあります。
このとき、発熱、全身倦怠感などの全身症状が出現します。
できるだけ早く尿路ドレナージ(たまった尿を体外へ出す)を行う必要があります。

検査と診断

尿路結石の典型的な症状(急激な疼痛発作や腰背部痛)があり、尿検査で血尿を認めた場合には尿管結石を強く疑います。
症状がないのに肉眼的血尿があった場合、健診で顕微鏡的血尿(目に見えない血尿)が指摘された場合なども、尿路結石の可能性も含めた検査が必要です。
また最近では、健診での画像検査(超音波検査やCT)で尿路結石が偶然見つかることもあります。

尿検査

血尿の有無や、結石の結晶の有無を調べます。
また、白血球をみて尿路感染の有無についても調べます。
尿のpHを見て、酸性もしくはアルカリ性でできやすい石を推測する場合もあります。

超音波検査

腎臓に結石がないか、水腎症(結石で尿管がふさがり腎盂内に尿がたまる)がないかを調べます。
腎臓の結石は超音波検査で確認できますが、尿管は体表から離れているので描出できません。

血液検査

主に血清クレアチニン値をみて腎機能のチェックを行います。
また、結石の原因になり得る副甲状腺機能亢進症を調べるため、血中のホルモン検査(PTH)を行う場合もあります。

腹部単純写真

結石のサイズや位置を診断しますが、小さい結石やレントゲンに映りにくい結石(尿酸結石やシスチン結石などのレントゲン透過性の結石)などは確認しにくいことがあります。

腹部単純CT(造影剤を使用しない)

尿路結石の有無や位置、大きさが正確に診断できるので、尿路結石の診断に欠かせない検査です。
また、レントゲン透過性の尿酸結石やシスチン結石においてもCTではっきりと確認することができます。

結石成分分析

自然に排出された結石や手術で摘出した結石を、どういう材質でできているかを調べます。
結石の成分が分かると、結石の予防に役立つことがあります。

治療

結石のサイズ、場所、材質などによりさまざまな治療があります。

自然排石期待(保存的治療)

4mm以下の結石はだいたい1ヶ月以内に排石されるので、保存的治療(飲水・運動など)を行います。
5mm以上の結石になると自然排石率は少し下がるものの、10mm以下の結石であれば、約6割の結石が1ヶ月以内に排石されます。
多くの尿管結石は自然排石が期待できるので、結石のサイズが10mm以下なら1~2ヶ月保存的治療を行い、それ以上経過しても排石しなければ手術をおすすめします。

薬物療法

生薬(ウロカルン)や漢方薬(猪苓湯)は排石促進作用があってよく使用されてきましたが、明らかな有効性は証明されていません。
前立腺肥大症治療薬(ハルナール®)やCa拮抗薬は、薬物による結石排石促進療法(medical expulsive therapy:MET)として、10mm以下の尿管結石で自然排石率が増加したという報告があります。
ただし、上記いずれの薬剤も排石促進薬として保険適用されていません。

結石溶解療法

尿酸結石とシスチン結石は、アルカリ性の液体に溶解しやすい性質があるので、尿をアルカリ化するクエン酸製剤(ウラリット®)を使用します。
また、尿酸結石の患者さまが高尿酸血症を合併している場合には尿酸生成を抑制する薬(フェブリク@やザイロリック®)を使用します。
シスチン結石には、尿中のシスチンを溶けやすくするシスチン尿症治療薬(チオラ®)を使用します。

しかし、尿路結石の患者さまが望まれる、結石をすべて溶かす特効薬は、現時点ではありません。
薬物療法や結石溶解療法を行ってもまだ残っている結石に対しては、外科的治療が必要になる場合があります。

尿路結石の外科的治療

尿路結石の外科的治療は大きく分けて2つあります。
1つは衝撃波でのによる治療(ESWL)、もう1つはレーザーによる内視鏡での治療(TULやPNL)です。
日本での尿路結石に対する外科的治療件数はESWLが圧倒的に多かったのですが、細径の内視鏡や軟性尿管鏡の登場で、TULがどんどん増えて、2014年にESWLを上回り、それ以降TULが結石治療で最も多く行われるようになりました。

体外衝撃波結石破砕術(Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy:ESWL)

患者さまには、ベッドに仰向けに寝てもらって、お腹か背中にクッションのような破砕装置を押し当てます。
衝撃波を結石に当てるのですが、衝撃波は結石だけに焦点をしぼるので、衝撃波の通る体の組織(皮膚・筋肉・骨・内臓など)は損傷を受けません。
患者さまにとって非常にストレスの少ない治療です。手術時間は約1時間で終わります。
1回の治療で破砕される場合もあれば、数回治療が必要となることがあります。
また砕石された結石が排出するのに、破砕後数日から1~2週間程度かかります。

経尿道的尿管結石砕石術(Transurethral Uretherolithotripsy:TUL)

麻酔をかけた状態で(腰椎麻酔や全身麻酔)、尿道から細い内視鏡(尿管鏡)を入れて、腎や尿管の結石をレーザーで割って取り除く手術です。
尿管鏡は金属製で硬い棒状のもの(硬性)と胃カメラのような柔らかいチューブ状のもの(軟性)があり、ケースバイケースで使い分けます。

経皮的腎砕石術(Percutaneous Nephrolithotripsy :PNL)

全身麻酔で行います。背中から腎臓に向けて通り道(トラクト)を作り、内視鏡が入る幅まで通り道を広げます。
内視鏡を入れて、腎臓内(腎盂や腎杯)の結石をレーザーで割り、細かくなった結石をトラクトから取り出す手術です。
手術時間は3~4時間ほどです。
腎臓内の大きな結石(2cm以上)やTULで治療困難な結石に対して行います。

経皮・経尿道同時内視鏡手術(Endoscopic combined intrarenal surgery:ECIRS)

大きな腎結石に対してTULとPNLを同時に行う治療法で、2020年4月に保険適応となりました。
治療の効率が良くなって、手術時間が短くなる点が長所ですが、術者2人以上およびモニターや器材が2セット必要なので、治療を行える施設が限られるという問題があります。

再発予防

尿路結石は自然に排石したり、治療によって取り除いたとしても、40~60%という高率で再発すると言われています。
そのため、結石の再発予防が非常に重要な課題になります。
確実に予防する方法はありませんが、十分な水分摂取を基本とし、生活習慣病やメタボリックシンドローム(複数の生活習慣病が合併した状態)と尿路結石との関連性から、生活指導や食生活の見直しが有用とされています。
また、結石が取り除かれた後も血液・尿検査、超音波検査などの定期的なメディカルチェックも大切です。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが、結石の苦しみを自然排石や治療で乗り越えても、そのあと放置すれば、忘れた頃にまた痛々しい経験をすることになりかねません。
結石を治療した後も、再発予防のケアや定期チェックが非常に大切なので、ぜひ当院へ受診してください。
以下に、当院で指導させて頂く、主な結石再発の予防法を紹介します。

① 1日2リットル以上の水を飲む

水分を多く取って、尿をたくさん出す、これは尿路結石の予防の基本と言われています。
とくに、夏場や入浴後・運動後の水分補給は大切です。
でも、アルコールは、体内で分解されるとき水が使われるので、体は脱水状態になります。
飲酒の際には、同じ量の水分を補給してください。

② シュウ酸をとり過ぎない

シュウ酸の多い食品には、まず野菜と飲み物(お茶・コーヒー・紅茶)があげられます。
野菜の中ではホウレンソウが代表的で、そのほかキャベツ、ブロッコリー、レタス、タケノコなどがあります。
茹でて調理したり、カルシウムと一緒に摂取するとシュウ酸の吸収を抑えることができます。
お茶・コーヒー・紅茶などの飲み物では、シュウ酸の少ないものに変えたり、飲み方の工夫をすることが大切です。
たとえば、同じお茶の中でも緑茶・抹茶より麦茶やほうじ茶を選ぶ、コーヒー・紅茶に牛乳を入れる、などです。
野菜は毎日食べても食べ過ぎる人は少ないかもしれませんが、お茶・コーヒー・紅茶は毎日飲む習慣のある人が多いので要注意です。

③ プリン体を多く含む食品をとり過ぎない

プリン体は体内で代謝され尿酸となり、過剰に摂取すると高尿酸血症となり結石形成につながります。
高プリン食(レバーや魚介類)やアルコール(ビールなど)の過剰摂取は控えるのが望ましいです。

④ カルシウムをとる

以前はカルシウムをとりすぎると結石ができやすくなると考えられていましたが、現在はカルシウムを十分とることが結石の再発予防に重要な役割があるとされています。
カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合し体外へ排出し、シュウ酸の吸収を抑制する作用があります。
1日のカルシウム摂取量は600-800mgが適量とされています。

⑤ 塩分や糖分をとり過ぎない

塩分や糖分のとり過ぎは、尿中へのカルシウムの排泄が増えるため、結石形成につながるといわれています。

⑥ クエン酸をとる

クエン酸は、シュウ酸とカルシウム、リン酸とカルシウムが結合するのを抑制するため、カルシウム結石の予防効果があります。
また尿中PHを上昇させ尿の酸性化をおさえるので、尿酸結石やシスチン結石の予防にも有効です。

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